主に代謝の中心である肝臓くんの機能。
”沈黙の臓器”とも呼ばれる臓器の理由もあわせて、主要となる働きについてまとめていきます。
クールでかっこいい〜はたらく肝臓くん特集です。
肝臓にはたくさんの血液が流れてくる特殊な仕組みがあります。
特殊な仕組みとは肝臓に入る血管、”門脈”という存在にあります。
”門脈”ってちょっと変わった名前ですが、毛細血管と毛細血管に挟まれる”静脈”のことです。
全身の血管はほとんど「動脈→毛細血管→静脈」という流れで血液が循環します。
門脈は「動脈→毛細血管→門脈→毛細血管→静脈」という特殊な血液の流れとなっています。
消化管、胆嚢、脾臓、膵臓からの静脈血は、この門脈を通過して肝臓に入ります。
それには大きく3つの意義があります。
①消化管で吸収された物質を、肝臓で解毒する。
②栄養分(糖質)をグリコーゲンとして貯蔵する。
③寿命を迎えた赤血球は脾臓で破壊され、その分解産物の再利用や胆汁中への排泄を行う。
門脈がもつ血圧を”門脈圧”とよびます。
正常な門脈圧は、静脈のため極めて低いです。この血圧に対して、肝臓くん自身がもつ血液への抵抗はとても小さいことから、たくさんの血液が一気に肝臓に入ることができます。
〜ちょこっと病理〜
肝臓が硬くなる”肝硬変”などの病気では、肝臓の毛細血管が破壊されます。
そのため門脈の血圧が上昇して肝臓に血液が送りにくくなる”門脈圧亢進症”とよばれる状態になります。
渋滞した血液は、門脈に入らずに回り道をして心臓に帰ります。それによって食道静脈瘤、痔などの二次的な病
態を招くことがあります。
門脈圧亢進症状では、腹壁静脈が怒張する”メデューサの頭”と言われる特徴的な所見が有名ですね。
メデューサってどんな頭? ・・・わからなかった方は「メデューサ 頭」で検索DA☆
先ほどは、門脈の特殊な構造と意義についてまとめました。
そんな肝臓くんには他にも多くの機能がありますが、ざっくりと4つの機能にまとめます。
①代謝機能:必要なエネルギーを分解したり、吸収したりする
②解毒・排泄機能:からだにとって悪さをする物質を弱らせて捨てる
③貯蔵機能:鉄やビタミン、血液などを貯める
④胆汁産生:胆汁を作る
え〜全然沈黙してないじゃないですか…てか働きすぎ!
そんな様々な機能をもつ肝臓くんは、”化学の工場”と例えられたりすることも。
胆汁は肝臓で作られるのですが、そのあと貯めておく働きを担うのは”胆嚢”くんです。
4つの機能のそれぞれの要点をおさえていきましょう。
前述の通り、肝臓にはたくさんの血液が門脈を通して運ばれてきます。
運ばれてきた血液から各栄養素を取り入れますが、そのままの形ではうまく体内で使うことができません。
そのため、肝臓ではこの集まった栄養素を使いやすいように処理する働きをしています(=代謝)
この代謝で生じた産物を排泄したり、解毒したりという機能も併せて行われています。
例えば、ブドウ糖はグリコーゲンという形へ合成されて貯蔵されることで血糖値を保つという作用があります(=糖代謝)
不要なものやからだに悪いものは排泄される…肝臓くんは排泄器官としても重要な役割を担っていますね。頼れるなあ。
”沈黙の臓器”と呼ばれる理由は、障害が起きても機能を維持できてしまい重症となるまで気づきにくいことが由来とされています。
肝臓くんは”予備能力”を持っている大きな特徴があり、その約2/3を切除しても元の大きさまで回復することができます。なんて奴なんだ…
引用・参考文献
南川 雅子(2019):「成人看護学[5] 消化器 (系統看護学講座 専門分野)」,第15版,医学書院
坂井 建雄(2018):「プロメテウス解剖学 コアアトラス」,第3版,医学書院
坂井 建雄(2018):「人体の構造と機能[1]解剖生理学」,第10版,医学書院
坂井 建雄ら(2010):「ぜんぶわかる人体解剖図-系統別・部位別にわかりやすくビジュアル解説」,第10版,医学書院